8分前の光と 10年越しの景色
更新日:6 分前
太陽の光が地球に届くまでには、約8分かかるのだという。 月からの光は1.3秒。先日、大阪の窯元が教えてくれた。
「じゃあ、今見てる太陽って、8分前の太陽ってことですか?」
「そう。今この瞬間に消えたとしても、わたしたちは8分間、 何も知らずに見つづけることになる」
事もなげにそう言われて、
なぜかその日からしばらくは、その話が頭から離れなかった。
10年前の、ちょうど今ごろの季節だったと思う。 東京駅の目の前に建つKITTE丸の内の 通路の一角に、 小さな売り場を出していた。 テーブル1つ置いた、ささやかなポップアップストアだった。 リブランディングでパッケージデザインした会社のお手伝いで
私も店頭に立っていた。
2日間のPOP UPが終わり
クライアントとお疲れ様の晩御飯の席で、こんな話をしていた。
「いつか、KITTEに置いてもらえたらいいですね!」
冗談まじりの、軽い言葉だった。 当時の私たちからすると、KITTEは少し背伸びをした先にある
憧れの場所のように感じられた。
それから10年が経った。
先日、その会社の代表から一枚の写真が届いた。
「見てください」という短いメッセージとともに。 写っていたのは、リブランディングを重ねた、あのパッケージが
KITTE大阪の店頭に、ごく当たり前の顔をして並んでいる様子だった。
しばらく、言葉が出なかった。
特別な出来事があったわけではない。
大きな広告を打ったわけでもない。 ただ、10年のあいだ
その会社は、ものづくりに真摯に取り組みつづけ
私もパッケージデザインに、誠実に向き合い続けた。
それだけのこと。
でも、その「それだけのこと」が、
10年という時間をかけて、ちゃんと一つの景色になった。
太陽の光の話を思い出す。
8分前に放たれた光を、 わたしたちは「今」だと思って見ている。 今日という日も、 きっと似たようなものなのだと思う。 すぐには、誰にも届かなくても、 今日 私が描く一本の線も、いつかどこかで 誰かの暮らしの中で生きているかもしれない。
8分後か、10年後かはわからない。
それでも光は届き、デザインも届く。

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